TOP > プロの簡単レシピ特集 > 賛否両論 笠原将弘さん特集 日本料理を語る

プロの簡単レシピ特集

レシピ特集目次へ戻る

日本料理を語る

日本料理を語る

父の味と日本料理の技を活かし、
若い世代が楽しめる料理を。

予約の取れない人気の日本料理店として知られる「賛否両論」。
テレビや雑誌などでも活躍する、店主の笠原将弘さんに、
店のことや日本料理へのこだわりについてお聞きしました。

父と師匠から教わった無駄を省くことの大切さ。

東京・武蔵小山で焼き鳥屋「とり将」を営む父の背中を見て育ちました。料理人としての父は、魚の捌き方などの技術が抜群で、味つけや盛りつけのセンスも良かった。焼き鳥がメインの居酒屋でしたが、かぶら蒸しなどの旬のメニューも提供していて、お客さまに喜ばれていました。とても丁寧に作られたおいしい料理を食べて育ったという自負があります。

高校卒業後は料理人になることを決意し、父を手伝ってそのまま後を継ごうと思っていました。しかし、父は「料理人になるなら、外へ出て一番いい仕事を見てこい」と、「正月屋吉兆」へと導いてくれました。今思えば父の言葉の意味がよく分かります。一番いいものを知っているから、自分のスタイルを持ち、崩すことができる。今の自分があるのは、父のおかげだと思っています。

父は二度手間や無駄なことが大嫌いな人でした。子どもの頃から、あらゆる場面で無駄を省くことを教えられましたが、修業が始まってから、それがいかに大切なことか実感しました。自分で店を出してからも、全く同じことを思っているし、店のスタッフにも同じことを言っています。効率的であることは、料理をする上で最も重要なことのひとつです。「正月屋吉兆」の師匠は、とても厳しい人でしたが、誰に対しても分け隔てなく叱るし、一緒に飲みに行ったりする時は優しい一面も見せてくれて、僕は大好きでした。「俺の言う通りにやっていればすべて上手くいくんだから」といつも言われていましたが、本当にその通り。仕事は完璧で、料理はもちろんですが、花を生けても字を書いても上手で、美意識について深く学ばせていただきました。今もとても尊敬している、僕にとって永遠の師匠です。

賛否両論 笠原将弘画像

賛否両論
笠原将弘(かさはらまさひろ)さん

「賛否両論」店主。父が東京・武蔵小山で焼き鳥屋「とり将」を営んでいたことにより、舌の感覚や食のセンスが磨かれていった幼少期。父のすすめで「正月屋吉兆」の厨房に入り、高校卒業から9 年間、料理人としての基礎を築く。父の病をきっかけに「とり将」を継ぎ、独自のアイデアを盛り込み、「とり将」をさらなる人気店に成長させた。2004年、「とり将」が30周年を迎えたのを機に閉店し、恵比寿に「賛否両論」を開店。瞬く間に予約の取れない人気店となる。

若い世代に日本料理を楽しんでもらいたい。

「正月屋吉兆」で10年は修業するつもりだったのですが、9年目に父が病気で倒れ、「とり将」を継ぐことを決めました。父が築いた居酒屋の料理をベースに、自分なりのアイデアを盛り込んで店を切り盛りするのは、新鮮で楽しい経験でしたね。修業時代に学んだ日本料理の技術を活かし、新作メニューを開発したりデザートを出したり、新しいことにも取り組み、応用力がついたと思います。

僕が店を継いでから、新たに30歳前後の同世代のお客さまが来てくれるようになったことは、とても励みになりました。その方たちと接する中で、リアルな金銭感覚を学ぶことにもなるのです。

それまで数万円の懐石料理を作り、それが当たり前になっていたのですが、世の中の若い世代は、そこまで食事に予算をかけられないことを痛感。そこから、自分と同世代の方々が楽しめる日本料理の店をやってみたいという気持ちが芽生え始めました。居酒屋ほどは安くはできないけれど、同世代がポケットマネーの範囲内で、彼女とのデートに使えるような店を作りたい。そういった思いでオープンしたのが「賛否両論」です。

メニューは、伝統的な日本料理に、「とり将」で出していた自分のオリジナル料理をミックスするようなイメージで、手頃な価格のコース料理を出すことにしました。おかげさまでオープン以来、たくさんのお客さまに来ていただき、常に満席にしていただいています。一番嬉しかったのは、イメージしていた通りに同世代の方々が評価してくれたこと。若い世代に向けて、日本料理の魅力を多少なりとも伝えられているかなと思います。

また、「賛否両論」のことを多くの方に知ってもらったことで、料理以外の講演や講師、出版、テレビ出演などの仕事もやらせていただける機会が増えました。こんなにも自分を取り巻く世界や可能性が広がるとは、想像もしていませんでしたが、今、人生って楽しいなと心から思っています。

食材は徹底的に活かし切る。
野菜は早めに常備菜に。

料理を作る時に大切にしているのは、食材の活かし方です。まずは物理的に無駄なく使うこと。うちの店では、魚の骨やアラ、野菜の皮まで、必ず煮出して出汁を取って使い切ります。とうもろこしの皮やヒゲも煮出してスープにするとおいしいんですよ。もう使えない、というところまで徹底して使うことは、料理の基本だと思います。

家庭でも食材が余ってしまうことが多いと思います。特に野菜は使われないまま放置されがちですが、肉や魚と同様に、野菜も鮮度は確実に落ちていきます。余ってしまうようなら、早めに調理して、塩漬けや甘酢漬けなどの常備菜にしておきましょう。まとめて作っておけば、毎日の食事の準備もスムーズになります。

また、余った食材を普段は使わないような料理に加えて、冒険してみるのもいいですね。失敗することもあるかも知れないけど、意外とおいしいという発見も必ずあるはず。繰り返しチャレンジしていけば、料理の幅が広がっていくことでしょう。

似たもの同士や補い合い。
組み合わせで引き立つ日本料理。

素材の組み合わせは人間関係に置き換えてみる。

素材を活かすという意味では、素材の味以上に、味を足さないという考え方もあります。素材の鮮度にこだわって、素材そのものの味をいただく。例えば鯛なら鯛の味を味わってもらう、というのが日本料理だと思います。

また、素材同士を組み合わせることで、それぞれの持ち味が引き立ち、さらにおいしくなるということもあります。素材の組み合わせ方は、基本的には日本料理のセオリーを守っていきます。わかめとたけのこ、ハモと松茸など、〝出会いもの〞と呼ばれる同じ季節に出回る旬のものは、間違いのない組み合わせです。

それ以外にも、自分の中にいろいろな理論があります。同じ色のもの、同じくらいの甘みのものなど、共通点のある食材同士は合うと考えています。一見、意外な組み合わせに見えても、どこかに似たところがあることも多い。例えば鮎とブルーベリーは相性がいいんですが、鮎が泳いでいる川の上流にはブルーベリーが栽培されていることが多く、旬も初夏のあたりで同じなんです。

僕の食材の組み合わせの理論は、人間関係に置き換えると分かりやすいと思います。同じ音楽を聴いている人、ファッションのセンスが似ている人、幼稚園が一緒の人など、人は共通点があると仲良くなりますよね。

一方で真逆の素材を組み合わせて、足りないところを補うこともあります。例えば、噛み応えのあるものと柔らかいものを組み合わせると、食感のバランスが取れるんです。人間でいえば、優等生と不良なのに妙に気が合うコンビといった感じ。お互いに足りない部分を補い合える組み合わせなんですね。

ないものを補うという考え方は、献立の立て方にも応用できます。まずメインをとんかつに決めたら、副菜は肉ではなく、あっさりした野菜や刺身にするといった具合。シンプルに考えていけば上手くいきます。

香りと焼き目は料理の
おいしさを引き出す秘訣。

料理を作る時に、特に意識しているのは香りと焼き目です。

まず、香りについては、春は木の芽、夏は山椒、しそ、みょうがなどの薬味類、秋・冬は黄柚子など、その季節に必ず出回る香りのある素材をアクセントとして使うこと。それだけで料理のおいしさは、格段にアップします。また、炒める時などに、素材そのものの香りが立つ瞬間まで、火を入れることも大事にしています。

焼き目については、視覚的においしそうに見える効果があります。日本料理では、焼き魚のどこに焼き目をつけるかまでこだわりますから。さらに焼くことで香ばしさを出すこともできます。照焼きのような料理なら、焼き目をつけることで、そこにたれが良く絡んで、よりおいしくなるという効果も期待できるのです。家庭でステーキなどを焼く時にも、焼き目のつけ方を、おいしそうに見えるように意識してみるといいのではないでしょうか。

専門的な技術をいろいろお話ししましたが、あまり料理を難しく考えないでほしいと思います。家では味が薄い日と濃い日があっていい。家庭料理は毎日味が違うから、食べ飽きないのです。レシピにとらわれすぎないで、大らかに料理を楽しんでください。

直伝レシピ

常に挑戦と前進を続ける笠原さんが披露してくれたのは、オリジナリティ溢れる3 品のレシピ。
笠原さん流の調理法はもちろん、食材やたれのアレンジ術もご紹介します。

  • 焼き茄子といちじく黄身酢がけ
  • 鯛茶漬けカシューナッツ胡麻だれ
  • かぶのすり流し炙り帆立添え

日本料理とワイン

料理や食に関連した、最近気になることや注目していることを、シェフや料理人の目線を通してお伝えします。

甘みのある調味料や魚にはワインの酸味がよく合う。

ワインは昔から好きで、よく飲んでいたんです。修業時代の1993~1994年頃に、ワインブームが来たこともあり、「正月屋吉兆」でも懐石料理とワインの組み合わせを提案していましたね。

日本料理には日本酒というイメージがありますが、日本料理は意外と砂糖やみりんなどの甘みのある調味料をたくさん使うので、酸味のあるワインは理にかなった組み合わせ。お造りや焼き魚にすだちなどの柑橘類を搾るように、魚と酸味も相性は良いと思います。

具体的には、日本料理にはキリッとした辛口の白ワインが合うと思いますが、よほど甘口でない限り白なら何でもいけますし、シャンパンもいいですね。赤ワインならブルゴーニュなど、軽めのものを選ぶといいでしょう。

でも、味の好みは主観的なもので十人十色ですから、僕がすすめたからといって、それが正解ではありません。重厚な赤ワインに刺身を合わせて食べるのが好きなら、それでいいと思います。いろいろなワインを試して自由に楽しんでもらえれば嬉しいですね。「賛否両論」では、フランスのすっきり系の白ワインなどを中心に提供しています。また、〝日本料理に合うワイン〞として製作に携わった「賛否両論セレクションワイン クネ」の赤と白も楽しんでいただけます。このワインを作るにあたり、スペインのワイナリーを訪問し、ワイン作りの現場を体験しました。スペイン料理と日本料理は、見た目は全く違いますが、塩分濃度は似ていると感じます。だから、スペインのワインも日本料理に合うものが多いんです。

キリッとした辛口の白、エレガントな果実味の赤、自由に楽しむ日本料理とワイン。

日本のワインも好きな銘柄はたくさんありますが、価格とのバランスもあり、ちょっと物足りないと感じる部分も。しかし、最近は種類が増えてきているし、若い世代が日本で栽培したぶどうを使って、オリジナリティのあるものを作ろうとがんばっています。近い将来、日本各地のワイナリーからおもしろいワインが、出てくることを期待しています。

「料理も、料理に合わせるワインも、さまざまなものにどんどんチャレンジして、自分のスタイルを見つけてほしい」と語る笠原さん。

「賛否両論」で楽しめるワイン

  • 賛否両論セレクションワイン クネ・レッド
    輸入元・三国ワイン株式会社
    スパイシーな香りとブルーベリーやカシスの赤い果実味が豊かな、口当たりのソフトな赤。きんぴらごぼうなどの野菜料理、照焼きなどの魚料理、肉料理全般に合います。
  • 2014 ルバイヤート甲州シュール・リー
    製造元・丸藤葡萄酒工業株式会社
    ワインのオリ(沈殿物)とともに熟成するシュール・リー製法による、香りと旨みのある辛口タイプ。寿司、刺身、カルパッチョ、塩味の焼き鳥などに。
  • ミュスカデ・セーブル・エ・メーヌシュール・リー ル・ソレイユ・ナンテ
    輸入元・株式会社スマイル
    黄色いりんごをイメージさせるまろやかな香り立ち、くっきりとした酸味、かすかな塩分が特徴。白身魚のソテー、サーモンステーキ、生牡蠣などの魚介類にぴったり。
  • レゼルヴ・ベルトミュー・シャルドネ2013
    輸入元・東亜商事株式会社
    とろみ感があり、豊かな果実味に加え、ほど良い酸味とほろ苦みも持ち合わせた白。海老・かに料理、あさりのワイン蒸し、鶏肉料理などと相性が良いワインです。

これが好き!My favorite items

貝印の調理道具の中から、シェフの愛用品をご紹介します。
使い心地や魅力、シェフおすすめのテクニックなど、プロならではの活用法をお伝えします。

関孫六 フレキシブルナイフ

切れ味が鋭い「関孫六フレキシブルナイフ」は、刃がとても薄く、よくしなります。その特性を利用して、さまざまな調理の場面で便利に使っています。

特に丸いものを切る時は、曲線に刃を沿わせるようにして、思い切ってしならせると、上手く切ることができます。

また、フルーツなど水分が多いものをカットする時にも向いていると感じますね。刃が薄いので、皮と果肉の間に刃先がスッと入り、きれいに仕上げることが可能です。写真で紹介したオレンジ以外にも、桃や巨峰などの皮をむく時に愛用しています。

いわしや小あじ、鮎などの小さな魚の大名おろしや三枚おろしにもおすすめです。中でも鮎は身が柔らかく、骨に密着していて、捌きにくいのですが、「関孫六 フレキシブルナイフ」を骨に沿ってしならせるように切れば、骨に身を残すことなく、美しく捌くことができます。同様に寿司ネタのコハダなどを捌く時に、とても便利だろうと思います。

筋や骨が残っている肉の下ごしらえにも最適です。切れ味の良い刃の先端部分を使えば、細やかな仕事もスムーズに進みます。

こんな風に使っています!

  • [オレンジ]

    オレンジ

    丸みに沿って刃をしならせ、小刻みに動かすと美しく皮がむけます。房から果肉を取り出す時は、薄皮の間に刃先を入れてむきます。

  • [鶏もも肉]

    鶏もも肉

    細かい筋や小さな骨などが残っている鶏もも肉の下処理に活用。細かい作業ですが、刃の先端を使って丁寧に取り除いています。

  • [トマト]

    トマト

    トマトを薄い輪切りにしたい時は、軽く手を添えて、真横にナイフを入れます。種の部分も崩れることなく美しくカットできます。

日本料理「賛否両論」恵比寿本店

〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿2-14-4 太田ビル1F
月~金曜日:18:00~(L.O. 23:00)
土・日・祝日:昼/12:00~14:30 夜/18:00~(L.O. 23:00)
定休日:不定休
Tel:03-3440-5572
電話受付時間:平日/14:00~ 土・日・祝日/11:00~
※毎月1日に、翌月分の予約受付を開始します。

(写真上)恵比寿の閑静な住宅街にある「賛否両論」。(写真下)カウンターと対面になっている厨房。お客さまの目の前で調理を行います。

Recipe

Page Top