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話題の料理人にインタビュー

話題の料理人にインタビュー

若手だからこそできる挑戦と成長。
恩師から学び、仲間と共に店の味を守り続ける。

名店「四川飯店」で菰田欣也(こもだきんや)総料理長に学び、若手料理人のためのコンクール「RED U-35 2016」では独創性&ホスピタリティが評価され、見事グランプリを獲得。
期待の新星・井上和豊さんにお話をうかがいました。

「僕ちゃん」からスタートした紆余曲折の修業時代。

 ワイワイ活気があって、作るのも食べるのも楽しい。それが中国料理を選んだ理由でした。調理師学校を経て新卒で「四川飯店」に就職したのが2001年。ちょうど四川飯店グループの「szechwan restaurant 陳 渋谷店」がオープンした年で、以来ずっとお世話になり、今年で17年目になります。

 19歳で上京した時は料理業界に関しても無知でしたし、「赤坂 四川飯店」で働きたいという意気込みがあったので、渋谷の店舗に配属されたことで「ああ、田舎もんだからここにまわされちゃったんだろうな」と、少しテンションが下がったのを覚えています。「四川飯店グループ」初のホテル出店として過去最高の売り上げを達成したその年は、とにかく忙しかったですね。実は、当時の記憶がほとんどないくらいです。皆手探りでしたし、一番下っ端の僕はなおさら、その日の仕事をこなすことにただただ必死でした。

イル ギオットーネ 井上和豊さん画像

井上和豊さん

「szechwan restaurant 陳 渋谷店」副料理長。1981年、秋田県湯沢市出身。同店がオープンした2001年に「四川飯店」に入社。35歳未満の若手料理人を対象とした料理コンクール「RED U-35 2016」では、7カ月間にも及ぶ審査を勝ち抜き、料理のみならず類稀なるホスピタリティで審査員を魅了。見事「第4代 レッドエッグ」(グランプリ)に輝いた。

※「RED U-35」とは……
「RYORININ’s EMERGING DREAM U-35」。2013年より毎年開催されている、35歳未満の新時代の若き才能を発掘する、日本最大級の料理人コンペティション。

 町の中国料理店で修業したかったのに宴会や結婚式といったホテル業務が多く、同期で一番年下、しかも中国料理未経験だったことから先輩たちには「僕ちゃん」と呼ばれて小僧扱いされ、任される作業にも差があったりして。なんだかイメージしていたのと違うなと生意気にも思ってしまって、入社して数週間で早くも辞めたいと親に電話したんです。

 そうしたら、母がひとこと「辛いんだったら帰っておいで」と。あまりにもあっさり言われたことで、逆にここで甘えたらダメだと思い、決意が固まりました。もし怒られていたらどうしたのかな。料理人を辞めたいと思ったことは、後にも先にもその時だけで、以後一度もないですね。

飛び石モードの絶好調期から月日を重ね、思いを重ねて。

 2年に1度開催される「日本中国料理協会」主催によるコンクールがあり、入社2年目に初めて応募しました。うちの店からは17人がエントリーし、皆の作品を菰田シェフ(総料理長の菰田欣也シェフ)がテコ入れしたのですが、僕は知識も技術もなくて今自分で見ても「なんだこれは」と思うようなものを作ったため、「独創的すぎて手をつけられないから、もうそのまま出しなさい」、と(笑)。それが予選を一位で通過。しかも嬉しいことに、香港で行われた決勝戦へ行くことができ、結果銅賞までいただけて。当時21歳だった僕にとっては大きなご褒美でした。自信にもなり、がむしゃらにやってきて良かったと思えたし、それが転機となり、仕事に対する情熱がさらに増しました。

 下積み時代のこの頃は、まず鍋を洗う仕事から始まり、オーダー伝票の読み上げ、切り物がうまくなってから前菜、そしてその後やっと鍋を扱う工程と順に進んでいきます。それが、受賞したことで僕はいきなり前菜を担当させてもらうことができました。「僕ちゃん」から2段飛ばしで昇格して、同期よりひとつ飛び抜けたかたちです。

 でも、どこか天狗になっていたんでしょうね。そのタイミングでバイク事故に遭い、足を骨折して半年自宅で静養となり…。調子に乗るなと神様に言われたようで情けなかったし、頭を冷やしました。そして、また同期と一緒のところからリスタートし、やっと地に足がついた感じでした。

 物事は繰り返しですよね。いい時もあれば、そうでない時もある。4年目に同コンクールで最年少で金賞をいただき、またしばらく絶好調だったかと思えば、6年目くらいの頃には大きなミスを連発し、半年くらいスランプに。仕込みを任されるようになり料理の腕は上達していたはずなのに、気持ちが乗らず、それが仕事に現れていたのだと思います。だから、休みの日も出勤してひたすら仕事をし、失った信頼を少しずつ取り戻せるよう努力しました。

 僕たち料理人は職人ですから、日々の仕事をしっかり丁寧に、それを重ねることでしか自信も技術も信頼も身についてはいきません。それは先輩たちに学んだこと。そして、時にはお客さまから厳しい意見をいただくこともありますが、成長できるチャンスだとすべて大事に受けとめ、やるならば楽しくやろうと思っています。

重要なのは仲間とのコミュニケーション。
料理は1人では完結できません。

RED U-35でグランプリ、故郷への思いを料理へ。

 実家は秋田で酪農を営み、その傍ら、父は花火職人をしています。高校3年生の夏休みにアルバイトをして、一度だけ現場に同行させてもらいました。夜空に花火が打ち上がり、そのたびに歓声や拍手が沸き起こる様子を対岸から眺めた時、鳥肌が立つほど感動しました。地道な仕事が結果に繋がり、たくさんの人に喜んでもらえる仕事って素晴らしいなと体感できたことは大きかったです。自分も父のように職人的な仕事がしたいと思ったのも、料理人を志したきっかけのひとつでした。三兄弟の長男として生まれ、本来なら家業を継ぐべき立場で、そういうしきたりが強い地域でもありますが、今は弟が実家を守り、お陰でこうして好きなことを仕事にできています。

 昨年の「RED U-35 2016」では、そんな感謝も込めて故郷・秋田の特産であるハタハタを使ったオードブルを出品しました。地元に何か貢献したいと思っていたので、秋田にスポットが当たるといいな、と勝手な恩返しでもありました。

 昨年のテーマは「発酵」。漬物などは誰もが考えることだからお茶に着目しました。中国茶、プーアール茶、ジャスミン茶など、お茶はすべて発酵の度合いが異なり、6~7種類に大類されます。お茶で出した煮汁に鴨肉を漬けたり、スモークの工程でも茶葉を入れて香りをまとわせる四川料理独特の手法を、自分でブレンドしたお茶を使って採り入れたりもしました。

 驚いたのが、料理助手としてついてくれるスタッフの方とは、本番の数時間前に初めてお会いするんです。そういう状況下でどう協力し合えるかも、もしかしたら審査項目にあったのかもしれません。もちろん詳細を紙に書いて説明しますが、料理は感覚なので、僕は審査員に出す前にスタッフの方たちにもまず食べてもらい、自分が仕込んだ料理はこれですよ、と実際に感じてもらいました。そんな風にコミュニケーションを取っていたら、スタッフ皆が楽しくなったようで(笑)。グランプリをいただけたのは、料理だけでなく、チームワークも評価された結果ではないかと僕は思っています。

店の味を学び、守り、究める。
副料理長として、仲間を支える。

 料理人の仕事って、スポーツに例えるとサッカーやバスケに似ています。個人競技ではなく団体戦。厨房内はうまくまわっていても、サーブする人が僕たちの意図をお客さまに伝えてくれないと、ただのなんでもない料理で終わってしまいますし、各々が自分の持ち場でしっかり動けてチームとしてうまく連携できてこそ成立する。また、その時の喜びは格別です。だから、意思疎通やコミュニケーションを図るために、ミーティングはこまめに行うようにしています。

「楽しい」ってやっぱり強いです。僕もまだまだ若手ですし、技術的なことは言えませんが、料理教室の先生方には、ハウツーだけでなく料理をする楽しさを、ぜひ、たくさんの人に広めていただきたいです。料理には正解がないことも楽しさのひとつですよね。だから、料理教室でもレシピは配るけれど、好きな味は皆違うからそれぞれでいいですよ、というアプローチで、自分らしい料理を作るための手引きを先生方がしてくださったらいいなと思います。

 ちなみに当店の考え方も同じです。陳建一シェフにいろいろ教わった中ですごく印象に残っているのが、「自分のファンを作りなさい」という言葉でした。入れる調味料などお店のルールはある程度存在しつつ、「そこから先は自分の感覚で、井上の麻婆豆腐はおいしいと言ってもらえるようになりなさい」と。広いですよね、人間が。お店ごとに、また料理人ごとにカラーがあり、それを良しとする経営者なので、気楽ですし、のびのびとやらせてもらっています。その分、きちんと料理を解釈しなければならないし、当店はいい意味で職人をしっかり育てる職場ですね。

 今から約2年前に、副料理長になりました。料理を作るだけでなく、店全体を見てどう利益を出していくか、従業員を辞めさせずに導いていくかなど、仕事と責任が増えました。代表取締役として頑張っている陳建太郎氏は、僕の1年下で渋谷店に入社し、苦しいことも楽しいこともすべて共にしてきた仲間です。だから自分にできることで力になり支えていきたいですし、もう一度四川料理を見つめ直してお店の味を学び、守っていきたい。そんな風に今は思っています。

直伝レシピ

料理の独創性に定評のある井上さんが滋味溢れる中国料理を家庭用にアレンジ。
夏にピッタリな3品のレシピを、調理のコツと共にご紹介します。

  • 石鍋茄子飯(シィグォチェズゥハン)夏茄子のスパイシー煮込み石焼ビビンバ仕立て
  • 韮菜炒肝片(ジュウツァイツォガンペン)レバニラ炒め
  • coming soon!

中国料理の食材と工夫レシピによって使い分けたいラー油

おいしい料理を提供するためのひと手間やひと工夫。食材や調理法などを切り口に、家庭でも参考になる料理の話題をシェフが直伝。

四川料理の辛みと色 旨みを引き出す「ラー油」。

 四川料理の味は、酸(酸味)・辣(らつ:辛み)・麻(しびれ)・苦(苦み)・甜(てん:甘み)・香(香り)・鹹(かん:塩み)に代表され、唐辛子や花山椒などたくさんの香辛料を使って複雑な味を表現します。

 辛みや香り、そして旨みを引き立てる調味料、ラー油もそのひとつ。当店では計6種類を料理によって使い分けています。

 例えば、麻婆豆腐用のラー油は色味に重点を置き、韓国産唐辛子ときれいな油を使って鮮明な赤色に仕上げます。また、激辛で知られる辣子鶏(ラーズージー)や鶏の唐揚げなどに用いる老油(ラオユ)は、香辛料を倍にし、じっくりと時間をかけて油に辛みを移していきます。

 今回ご紹介するのは、基本のラー油と味の付いたラー油、四川醤(しせんじゃん)です。ラー油は、使い込んで黒っぽくなった揚げ物用の油で作ることで、独特の風味と味わいになります。捨てずに再利用できるので、エコにもなりますよね。

 四川醤は牛肉や海老炒めなどと相性が良く、そのまま食べてもおいしいですし、ご飯や冷奴にのせたり、マヨネーズと和えてディップにしたりするなど応用のきくラー油です。どちらも簡単に作れますので、ぜひ挑戦して、味の違いを楽しんでみてください。

ラー油 オリジナルレシピ

『szechwan restaurant 陳 渋谷店』で
手作りしているラー油のレシピをご紹介します。

「イル ギオットーネ」に常備されているビネガー類。

基本のラー油

辛み、風味が特長。クセがなく、どんな料理にも合います。油にじっくりと香辛料の香りを移すのがポイント。

● 材料(作りやすい分量)
サラダ油……500ml
ねぎ(青い部分)……3本分
しょうが……薄切り3切
調味料・香辛料

A

桂皮……5g
八角……2粒
丁香(クローブ)……5粒
陳皮……10g
花椒……10粒
唐辛子……10g

B

一味唐辛子……50g
パプリカパウダー……40g
水……大さじ2

● 作り方
  1. 小鍋にサラダ油を入れ、みじん切りにしたねぎとしょうが、Aを加えて混ぜる。火にかけ、弱火からゆっくり温度を上げて、油に辛みや香りを付けていく。
  2. 耐熱容器にBを合わせておく。
  3. ①の油のねぎが香ばしく色付いてきたら、漉し網でねぎ・しょうが・Aを漉す。鍋に油を戻して油の温度を上げ、焦がさないよう混ぜながら②に少しずつ注ぐ。ラップなどで蓋をしてしばらくおき、完全に冷めたら完成。
    ※冷蔵庫で2週間ほど保存可能。
「イル ギオットーネ」に常備されているビネガー類。

四川醤(味付けラー油)

辛み、旨みが特長。ほろ苦く、海老の風味が香ばしい味付けラー油は、そのまま食べたり炒め物に。

● 材料(作りやすい分量)
サラダ油……500ml
ねぎ(青い部分)……3本分
しょうが……薄切り3切
玉ねぎ……1/4個
調味料・香辛料

A

桂皮……5g
八角……2粒
丁香(クローブ)……5粒
陳皮……10g
花椒……10粒
朝天辣椒(チョウテンラージャオ) (唐辛子)……10g
※Aの香辛料の代わりに五香粉を使ってもOK。

B

干し海老……20g
干し椎茸……2枚(10g)
フライドガーリック……25g

C

朝天辣椒面(一味唐辛子)……20g
パプリカパウダー……15g
チキンパウダー……小さじ1/2
グラニュー糖……小さじ1/2
オイスターソース……大さじ1
しょうゆ……大さじ1/2
酒……大さじ2

● 作り方
  1. 小鍋にサラダ油を入れ、みじん切りにしたねぎ・しょうが、適当な厚さにスライスした玉ねぎ、Aを入れて火にかける。弱火からゆっくり温度を上げて、油に辛みや香りを付けていく。
  2. Bをミキサーにかけて粉末にする。
  3. 耐熱容器に②、Cを入れてよく混ぜる。
  4. ①の油の温度が上がり、野菜が香ばしく色付いてきたら、漉し網で野菜とAを漉して油を③に注ぎ入れ、混ぜてラップをかけてしばらくおく。完全に冷めたら出来上がり。
    ※冷蔵庫で2週間ほど保存可能。

szechwan restaurant 陳
渋谷店で使用している
その他のラー油4種
  1. 食べるラー油

    特長▶具だくさん(ガーリック・揚げねぎなど)
    使用する料理▶ご飯にかける

  2. 麻婆豆腐用ラー油

    特長▶辛み(特に強い)、色
    使用する料理▶麻婆豆腐

  3. 干鍋醤 ガングオジャン

    特長▶辛み、コク
    使用する料理▶干鍋(スープのない鍋)

  4. 老油

    特長▶香り(2倍の香辛料を使用)
    使用する料理▶鶏の唐揚げ、辣子鶏

これが好き!My favorite items

貝印の調理道具の中から、料理人のお気に入りの道具をご紹介します。
使い心地や魅力、おすすめのテクニックなど、プロならではの活用法をお伝えします。

SELECT 100 調理器セット

 中国料理は魚も肉も、食材の下処理から調理、繊細な飾り切りにいたるまで、すべて中華包丁一本で行います。習熟するには何年もかかり、もちろんスライサーなんて使わせてもらえません。だから今回初めて試してみたのですが、そのクオリティの高さに驚きましたし、何より調理していて楽しかったです。

 刃の角度が良いから、「スライサー」で切った野菜は表面がツヤツヤしています。これはとても大事なことで、切れない包丁だとみずみずしさが失われ、食材の質を落としてしまうのです。「調理器セット」はその点をクリアしていますから、包丁の代わりとして十分対応できますね。

「調理器セット」を使うと時間を短縮できたり手軽なだけでなく、均一に切ることで味の入りが良くなります。また、美しく仕上がると、調理がいっそう楽しくなりますよね。包丁だと難しい部分はこのセットを活用して、ぜひいろいろなレシピに挑戦し、料理を楽しんでいただけたらと思います。ただ、想像以上に切れ味が良いので、指を切らないよう注意してください。両刃のため押しても引いても切れるので、あっという間に食材がなくなりますから。

調理のアイデア例

料理例1▶[細せん切り器・スライサーで作る 中華の甘酢漬け]

[細せん切り器・スライサーで作る  中華の甘酢漬け]

「細せん切り器」で切ったにんじんを大根で巻いて甘酢漬けに。葉っぱのように敷いたきゅうりも「スライサー」で。

  1. [細せん切り器・スライサーで作る  中華の甘酢漬け]

    「細せん切り器」の細かさにビックリ。 往復でスライスできるから調理時間も半分で済み、あっという間に出来上がります。「指ガード」も幅が広くて使いやすいです。

  2. [細せん切り器・スライサーで作る  中華の甘酢漬け]

    幅広の桂むきにするのは包丁だとなかなか難しいですが、「スライサー」なら均一に、 ここまできれいに仕上がります。かなり薄く切れるので、食材に巻くと透明度があり、美しいですね。

料理例2 ▶[ せん切り器・おろし器で作る 大根とクラゲのねぎ和え]

[せん切り器・おろし器で作る 大根とクラゲのねぎ和え]

「せん切り器」で大根を切ってクラゲと和え、「おろし器」でおろした紅芯大根を、いちごに見立てて盛りつけました。食べる際にレモンなどの柑橘類を搾りかけると、紅芯大根がオレンジ色に変わるという仕掛け付きです。「おろし器」は食材の水分がほどよく出る上に、穴が大きめで鬼おろしのようになり、シャキシャキふんわりとした食感を楽しめます。

szechwan restaurant 陳 渋谷店

東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル 2F
営業時間:昼/11 : 30~15 : 00(14 : 00 L.O.)
夜/17 : 30~23 : 00(21 : 30 L.O.)
定休日:無休
Tel:03-3463-4001

入口(写真上)から店内に入ると、四川料理の特徴である辛み=唐辛子の赤を基調とした空間(写真下)が広がります。

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