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季節の食にまつわることをお届けします 旬の食レポート

2016 Autumn

身近な食のストーリー

紀州が誇る房なりの山椒「ぶどう山椒」

紀州が誇る房なりの山椒「ぶどう山椒」爽やかな柑橘系の香りと、ピリリとした辛み。
私たちの食卓を彩る山椒をもっと身近に楽しむために、
ぶどう山椒の名産地、和歌山県を訪れました。

7月下旬、山椒畑に実るぶどう山椒。場所によっては実が赤く、熟し始めている。
7月下旬、山椒畑に実るぶどう山椒。場所によっては実が赤く、熟し始めている。

日本の食文化を
豊かに彩る山椒の歴史。

 日本人と山椒のつながりは古く、縄文時代の遺跡からは山椒の化石が発見されているほどです。魏志倭人伝や古事記にも、山椒は古名「ハジカミ」として登場しています。山椒はふだんの料理に香りや辛みのアクセントを加えてくれるだけでなく、肉や魚の食あたり防止としても重宝されてきました。

 英名はJapanese Pepper 。「日本のこしょう」と呼ばれている山椒は、日本の食生活を語る上で欠かせない存在です。実はこの山椒の全国収穫量のうち、約70%を占めているのが和歌山県。さらに、ぶどうのように実がなることからその名がついたぶどう山椒は、主に和歌山県で生産されている品種です。ぶどう山椒は大阪の泉南地方が栽培の北限といわれ、以北に栽培されている朝倉山椒に比べて粒が大きく、辛みが強いのが特徴です。今回は海南市で山椒を扱う山物屋、山本勝之助商店の土田さんに、ぶどう山椒の魅力と活用法について話を伺いました。

活用法は無限大! 知れば知るほど奥深い
和歌山県産・ぶどう山椒の魅力

山椒が持つ多彩な風味を知り、
気軽に活用してほしい。

「かねいち」の商号で親しまれる山本勝之助商店は、和歌山県海南市で山椒などの薬味や、棕櫚皮を原料とする家庭用品を販売している山物屋です。かつてこの地域には、山でとれた植物をもとにさまざまなものを販売する山物屋が多く存在していました。土田さんは、一時は廃業間近となっていた山本勝之助商店を引き継ぎ、昔と変わらぬ製法でぶどう山椒の加工・販売を行っています。

「当店では、かれこれ100年以上ぶどう山椒を扱っています。近くの山に登ると山椒畑が広がり、現在も農家さんが一つひとつ手摘みする風景を見ることができます。生の実を少しかじると、爽やかな柑橘系の香りが漂います。その香りからは山椒がミカン科であることが納得できるでしょう」。

土田高史さん画像

山本勝之助商店
土田高史さん

山本勝之助商店の創業者、山本勝之助の子孫である三姉妹とともに店を経営。関西では最高の山椒の作り手と称されるほど、こだわりの山椒作りを展開している。

 山椒といえば鰻のかば焼きをイメージする人が多いでしょう。しかし、山椒の活用法はそれだけではありません。土田さんいわく、こしょうが合うものなら何でもいけるはず、とのこと。「山椒が持つ独特の香りと刺激は、国外でも人気があります。海外の方は先入観を持たずに山椒を使ったレシピを考案できるようで、フランスのシェフはアイスクリームやチョコレートなど、驚くような料理に山椒を活用しています」。

 ぶどう山椒の栽培には、西日が当たらず日照時間が短い山間の傾斜地が適しているので、山が多い和歌山県は最高の生育環境です。私たちがふだん食べている青い山椒は、5月中旬~下旬にかけて収穫されるもので、実が若く種がやわらかいので、丸ごと食べられる佃煮などに加工するのがおすすめ。一方、8月中旬まで収穫できる山椒は、すり潰して粉末状のスパイスにするのが一般的です。

 日本ではあまり知られていないのですが、その後10月上旬まで収穫できる山椒は赤山椒と呼ばれ、中国では実が熟すと木に赤い花が咲いたようにも見えることから花椒(ホアジャオ)の名で親しまれているそうです。「若い実よりも風味が強く、調理の初めから味つけとして使用できるのが特徴です。それぞれのおいしさがあるので、日本でも赤山椒が広まってくれると嬉しいです」と土田さんは話します。

山本勝之助商店おすすめの食し方

山椒アイスクリーム

バニラアイスクリームに粉末の山椒をふりかけるだけで完成。山椒の辛みがアイスクリームの甘さを引きしめ、上品な味わいになります。アイスクリームの種類を変えたり、山椒の量を調整したりして、自分好みに仕上げましょう。

山椒コアントロー

飲酒用、料理酒用として家庭で多めに作る時の目安は、コアントロー900mlに、1時間ほど水に漬けてアク抜きした山椒の実50g、氷砂糖400g。10時間ほど漬けたら山椒を取り出しましょう。山椒の爽やかな香りが引き立つリキュールに。

山椒の風味を活かした調味料

試してほしい!

※山椒ペーストの作り方

① 山椒の実を3回ゆでこぼし、水気を切る。
② 山椒をミキサーにかける、もしくはすり鉢でする。

鮮やかなグリーンを放つ
最上級の粉山椒。

「当店ではぶどう山椒の香りを最大限に引き出すため、通常そのまま粉末にされる山椒から小枝や種をすべて取り除いています。特に油分が含まれる種は酸化が早く、取り除くことで香りが長持ちするのです。小枝や種を除くと、残るのは全体のわずか4割ほど。相当な手間と時間がかかりますが、当店の粉山椒が持つ鮮やかなグリーンは、豊かな香りの証拠です」。

 通常、一般的な店舗で販売されている粉山椒は、この選別を行っていないため茶色っぽい色になっています。じっくりと時間をかけて作られた粉山椒は、まるで採れたての果実のような強い香りを放ち、鮮やかなグリーンは料理に彩りを添えてくれます。

 また、実を石臼で挽いているのもこだわりのひとつ。石は金属と違って摩擦熱が発生しにくいため、香りや色が飛びにくくなるそうです。実が湿気を帯びているとうまく粉末にならないので、雨の日に作業はできません。「手廻しせねば雨が降る」という山本勝之助商店の経営訓も、天気に左右されるぶどう山椒の石臼挽きから生まれた言葉かもしれません。

山本勝之助商店
〒642-0024和歌山県海南市阪井679
Tel:073-487-0001
http://yamamotokatsunosuke.com

 知られざる魅力にあふれるぶどう山椒ですが、現在和歌山県では山椒農家の高齢化が深刻化しています。約10年で寿命を迎える山椒の木は、定期的な植え替えが必要。後継ぎがいない農家さんでは、この植え替えをする決心がつかずにいる人も多く、このままでは日本が誇る香辛料、ぶどう山椒の生産が途絶えてしまうのではないかと土田さんは懸念しています。「皆さんが思っているよりも、山椒は身近な食材です。おなじみの和食はもちろん、イタリアンやフレンチ、甘いスイーツ、いろいろな料理と楽しんでください」。自然豊かな和歌山の地で、日本の食文化を彩ってきた山椒の栽培が、これからも続いていくことを願います。

独特な香りと辛みを損なわない、こだわりの石臼挽き

〔 1 〕
乾燥機で約12時間乾燥させた山椒をふるいにかけ、小枝や種を取り除きます。写真で見える黒い粒々が山椒の種。

〔 2 〕
山椒を木箱に入れ、ふるいで除ききれなかった小枝や種を一つひとつ手作業で取り出します。

〔 3 〕
石臼で山椒をゆっくりと挽いていきます。よく晴れた湿度の低い日でなければ、理想の粉末にはならないそう。

〔 4 〕
ふるいにかけ、大きな粒を取り除いたら完成! 美しいグリーンの粉山椒が出来上がります。

収穫した山椒から小枝や種を取り除くと、量は全体の約4 割に減ってしまいます。
その後、じっくりと時間をかけて挽くことで、色鮮やかな粉山椒が完成します。

ようこそ、伊勢丹新宿本店「Kitchen stage by KaiHouse」へ!

『Kitchen Stage by Kai House 』は、伊勢丹新宿本店の地下1階に設けたイートイン・スペース。2~3週間ごとにさまざまなジャンルの人気料理人や料理研究家たちが考案したメニューを提供しています。カウンター席前のオープンキッチンでは、プロならではの道具使いや盛りつけが繰り広げられ、料理を学んでいる方にとってもプロの業を間近で見られる絶好の場として好評です。

また、「『Kitchen Stage 』で食べたあの味を家庭でも作りたい」、お客さまにそう思っていただけるよう、調理の詳しいポイントに加え、どんな食材や道具を使用しているのかも、配付しているレシピなどでわかりやすくご案内しています。食材や季節感にもこだわった、プロが作る“本物の味”を用意してお待ちしておりますので、ぜひ一度お越しください。

『Kitchen Stage by Kai House』は、スタイリッシュなオープンキッチンを完備。セミナー時には、人気料理人や料理研究家の調理技術を目の前で見ながらお食事ができます。

<6月~8月に提供した料理>

6/15(水)~6/28(火)

昼は伝統の味を引き継いだ洋食、夜は本格フレンチを提供している京橋の『レストランサカキ』が初登場。四代目の榊原シェフには、美しく繊細なフレンチの前菜3種盛りとメインの洋食を組み合わせた、『Kitchen Stage』ならではの贅沢なコースを考案いただきました。

7/27(水)~8/16(火)

『Kitchen Stage』ではおなじみの『イレール 人形町』島田シェフが今年も登場。今回は、イベリコ豚のグリエや鴨のコンフィなどの4種からメインを選べる盛りだくさんの“ビストロワンプレート”をご提供。食後のデザート“バナナの冷たいスフレ”はお店でも人気の逸品です。

<9月~ 11月に登場予定のレストラン・シェフ>

  • 9/14(水)~9/27(火)

    新和食

    山下春幸シェフ

    赤坂
    <HAL YAMASHITA 東京>
    山下春幸シェフ

    和の伝統をベースに、遊び心溢れる自由な発想で、驚きの料理の数々を提供している山下シェフ。シャンパンとともにお楽しみいただける新和食をどうぞ。

  • 9/28(水)~10/18(火)

    イタリアン

    笹島保弘シェフ

    京都/丸の内
    <イル ギオットーネ>
    笹島保弘シェフ

    京都で最も予約が取りづらい名店が今年もキッチンステージに登場。五感を刺激する魅力的な京イタリアンをご堪能ください。

  • 10/19(水)~11/1(火)

    フレンチ

    植木将仁シェフ

    銀座
    <Restaurant MASA UEKI>
    植木将仁シェフ

    アートでモダンなガストロノミーを堪能できるレストランで活躍する植木シェフ。自ら目利きした食材で創り上げる「UEKI CUIS I N E 」を、有田焼のお皿にのせてご提供します。

場所:東京都新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿本店 本館B1 明治通り側エレベーター前
10:30~20:00(L.O.19:00)
Tel: 03-3352-1111(伊勢丹新宿本店 大代表)
メニューについては、『Kitchen Stage by Kai House』公式ホームページ内
URL http://www.kai-group.com/fun/kitchen_stage/
※都合によりスケジュール・メニューの一部が変更になる場合がございます。

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