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季節の食にまつわることをお届けします 旬の食レポート

2016 Winter

身近な食のストーリー

夏野菜を食べる味噌径山寺きんざんじ味噌」

夏野菜がたっぷり入った径山寺味噌は、
和歌山県でご飯のお供として愛される“食べる味噌”。
そのルーツを探ると、知られざる歴史と魅力が見えてきました。

7月下旬、山椒畑に実るぶどう山椒。場所によっては実が赤く、熟し始めている。
写真左:大きな鉄鍋で大豆を炒る。右上:唐箕で除ききれなかった大豆の皮を丁寧にふるいにかける。
右下:麹室で麹づけがされている大豆と大麦。

中国から伝わった
夏野菜を保存する知恵。

 味噌といえば、汁物や炒め物などに使用される調味料を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、径山寺味噌は食べる味噌。いわゆる野菜や穀物などを入れて作られる“なめ味噌”の一種です。

 そもそも径山寺味噌は、夏野菜を冬まで蓄えておくための保存食として中国で誕生しました。調味料としての味噌の伝来は飛鳥時代という説が有力ですが、径山寺味噌が伝来したのはそれから数百年後の鎌倉時代。中国・宋の径山寺で修行を積んだ日本の僧・覚心かくしんが、帰国後自身が開山した和歌山県の興国寺こうこくじにその製法を伝えたのが始まりといわれています。以来、白うり、茄子、しょうが、しそがたっぷり漬け込まれた風味豊かななめ味噌は、和歌山県では食卓に欠かせないおかずとなりました。

 そんな径山寺味噌が持つ歴史と魅力、さらなる活用法を探るため、鎌倉時代の製法が最も昔のまま残っているという老舗、和歌山県御坊にある堀河屋野村を訪ねました。

※径山寺味噌は「金山寺味噌」と表されることもあります。

醤油と味噌の老舗 堀河屋野村の18代目が語る
径山寺味噌の歴史と魅力

江戸時代から続く
こだわり抜いた味噌作り。

 創業は元禄年間。もともと廻船問屋を営んでいた堀河屋野村は数隻の難破を機に、得意先への手土産に作っていた味噌や醤油へと本業を転換していきました。それから300年間、すべての工程を手作業で行ってきたこの店は、和歌山県を代表する醤油・味噌作りの老舗となっています。

 堀河屋野村で販売している“径山寺味噌きんざんじみそ”の製法は鎌倉時代のものを一子相伝で受け継いだものです。手間暇がかかるその工程を、18代目太兵衛の名を継ぐ野村圭佑さんに教えていただきました。

「まずはかまどに薪をくべ、大豆を鉄鍋で炒るところから始まります。作り方はもちろん、仕込み蔵や道具も先代から受け継いできた年代物ですよ」。炒った大豆は皮を唐箕とうみで取り除き、石臼でひきわりに。その後水でふやかした大麦と混ぜて蒸し、麹室こうじむろで3日間ほど麹をつけ、同時に蒸した米にも麹をつけていきます。ここで注目したいのが、堀河屋野村では麹菌を手作業で作っていること。これは“手麹”と呼ばれ、自動で温度管理される現代の麹室と違い、目を離すことができない大変な作業です。

野村圭佑さん画像

堀河屋野村
野村圭佑のむらけいすけさん

1980年、元禄年間より続く堀河屋野村の長男として誕生。中央大学法学部を経て、2003年兼松株式会社に入社。商社時代は大豆の担当となり、飼料用の大豆産品をインド・中国・南米より輸入し、流通・販売に携わる。2012年に家業である堀河屋野村に戻り、醬油・味噌の製造、販売を担う。堀河屋野村18代目太兵衛襲名予定。

「1日目、麹室の温度は50℃にまで上昇するので、手入れをしながら35~40℃に保たなければいけません。また、径山寺味噌のように、異なる素材に同時に麹をつけていくのはとても難しいこと。気候や粒の大きさによっても麹の成長は異なるため、生きものを育てているような感覚ですね」。

 麹を育てる傍ら、白うり、茄子、しょうが、しそは細かく刻み、一昼夜塩漬けに。麹花こうじばなをつけ始めた大豆・大麦・米と混ぜ合わせたら、樽に詰めて熟成を待ちます。重石を徐々に軽くしながら、早い時は三カ月半で完成です。

 最近は径山寺味噌と称する味噌も、本来の伝統的な径山寺味噌とは別物のような、野菜が入っていないものが多いそう。「和歌山の伝統的な食事といえば、ほうじ茶の茶粥に径山寺味噌がお決まり。野菜の旨みが引き立つ、本場和歌山の本物の径山寺味噌をぜひ楽しんでほしい」と野村さん。日本人に欠かせない調味料・醤油のルーツともいわれている径山寺味噌には、どの味噌にもない歴史と風味が詰まっているのです。

径山寺味噌に漬け込む野菜たち

使用するのは、夏に旬を迎える白うり、茄子、しょうが、しその4種類。正式なルーツは定かでありませんが、この4種を漬け込むのが径山寺味噌の基本だそうです。堀河屋野村では、国産にこだわった3種類の塩で、塩漬けと塩抜きを繰り返します。粗塩で雑味を消してから、最後はなめらかな塩で味を調えるのが、おいしさの秘密です。

径山寺味噌から生まれた
醤油の知られざる歴史。

 日本の醤油のルーツは諸説ありますが、鎌倉時代に和歌山県湯浅町周辺に伝わった径山寺味噌の、上澄み液が発展したものだといわれています。“醤”とは麹と食塩で醗酵させた調味料のことを指しますが、アジア各国の醤を見ても醤油(SOY SAUCE)は日本にしかありません。

 堀河屋野村では、“徑山寺味噌”、一般的な味噌、醤油の順に、時季をずらしながら仕込んでいます。

「“徑山寺味噌”の仕込みは6~8月、夏野菜が旬を迎える時季に始めます。醤油は10月~翌年5月。よって、普通の味噌の仕込みができるのは9 月しかありません。「手麹」と呼ばれる伝統製法のみで作る当蔵のポリシーゆえ、同時に違うものを作れないのです」と野村さん。麹室の状態を見極めながら、研ぎ澄まされた感覚で上質な麹を育てていくそうです。

 また、大豆、小麦、大麦、米はすべて国産。元禄から続く堀河屋野村にとって、化学調味料や防腐剤などの添加物不使用などというのは当たり前のことです。かつて商社で海外を相手に大豆の輸出入をしていたという野村さんは、次第に家業である醤油や味噌作りの奥深さに魅了されていったといいます。

堀河屋野村
〒644-0002 和歌山県御坊市薗743
Tel:0738-22-0063
http://www.horikawaya.com

「当店では北海道産丸大豆しか使っていません。しかし、世に出回っている醤油と呼ばれるものの8割は大豆どころか脱脂加工大豆と呼ばれる、大豆油を抽出した後に残る残渣ざんさが原料になっています。“醤油”の字を見てもわかるように、油がなくては醤油にはなりません。もちろん、そういった工業製品も安く大量に流通させるために必要かもしれません。今の時代、さまざまなツールを用いて、正しい情報と品物をお届けするのが私の使命と感じています」。古式製法を守り続ける堀河屋野村の味噌と醤油。“これぞ本物”という味を、次世代に伝えていきたいという老舗のこだわりを感じました。

径山寺味噌をもっとおいしく食す
とっておきの活用術

径山寺味噌のトースト

同じ発酵食品であるチーズと径山寺味噌は相性抜群。野菜の食感が楽しめます。

[材料(4人分)]
バゲット……1/2本
径山寺味噌……適量
チーズ(溶けるタイプ)……適量
オリーブオイル……少々
はちみつ……お好みで

[作り方]
  1. オーブントースターを200℃に温めておく。
  2. バゲットをカットし、径山寺味噌をのせる。径山寺味噌は野菜の部分をたっぷりのせるのがおすすめ。
  3. チーズをのせ、オリーブオイルをたらす。
  4. オーブントースターで約3分焼き、お好みではちみつを少したらしたら完成。

径山寺味噌とささみの酢の物

径山寺味噌のほのかな甘みとお酢の酸味がクセになる一品。お酒のあてにもぴったりです。

[材料(4人分)]
きゅうり……2本
ミニトマト……数個
塩……小さじ1
酒……大さじ1
鶏ささみ肉……1~2本
≪合わせ酢≫
径山寺味噌……大さじ1
酢…大さじ1

[作り方]
  1. きゅうりはスライスして塩(分量外)でもむ。しばらく置いた後、水で軽く洗って水分を切る。
  2. ミニトマトは皮をむき、大きい場合は半分に切っておく。
  3. 沸騰したお湯に塩、酒、鶏ささみ肉を入れて火を止め、蓋をして10分蒸らす。粗熱がとれたら鶏ささみ肉を細かくさく。
    ※電子レンジの場合は、鶏ささみ肉に塩、酒をふり、ラップをかけて500Wで4分ほど可熱する。
  4. ボウルに径山寺味噌、酢を入れて混ぜ、≪合わせ酢≫を作る。①、②、③を入れて和え、冷蔵庫で冷やしたら完成。径山寺味噌は大豆の部分を多く使うのがおすすめ。

ようこそ、伊勢丹新宿本店「Kitchen stage by KaiHouse」へ!

『Kitchen Stage by Kai House 』は、伊勢丹新宿本店の地下1階に設けたイートイン・スペース。2~3週間ごとにさまざまなジャンルの人気料理人や料理研究家たちが考案したメニューを提供しています。カウンター席前のオープンキッチンでは、プロならではの道具使いや盛りつけが繰り広げられ、料理を学んでいる方にとってもプロの業を間近で見られる絶好の場として好評です。

また、「『Kitchen Stage 』で食べたあの味を家庭でも作りたい」、お客さまにそう思っていただけるよう、調理の詳しいポイントに加え、どんな食材や道具を使用しているのかも、配付しているレシピなどでわかりやすくご案内しています。食材や季節感にもこだわった、プロが作る“本物の味”を用意してお待ちしておりますので、ぜひ一度お越しください。

『Kitchen Stage by Kai House』は、スタイリッシュなオープンキッチンを完備。セミナー時には、人気料理人や料理研究家の調理技術を目の前で見ながらお食事ができます。

<9月~10月に提供した料理>

9/14(水)~9/27(火)

“禅"をテーマにしたモダンジャパニーズレストラン『HAL YAMASHITA 東京』が初登場。もなかのアミューズから始まり、豪華なハイティースタイルの前菜、甘味まで、山下春幸シェフの世界を堪能いただいた2週間。シャンパーニュ好きの美食家に人気のルイナールブラン・ド・ブラン、ロゼと共に楽しめる、スタイリッシュなコースをご考案いただきました。

9/28(水)~10/18(火)

本店も丸の内店も、相変わらず多くの食通を虜にしている『イルギオットーネ』の笹島保弘シェフが、昨年に引き続き再登場です。舞茸やさんま、戻り鰹、デラウェアなど、日本の秋の味覚がイノベイティブなイタリアンに変身。笹島保弘シェフの魅力溢れる京イタリアンをご堪能いただきました。

<11月~ 2017年1月に登場予定のレストラン・シェフ>

  • 11/16(水)~11/29(火)

    フレンチ

    櫻井信一郎シェフ

    南青山
    <ローブリュー>
    櫻井信一郎さくらい しんいちろうシェフ

    フランスとスペインにまたがるバスク地方の料理を得意とする櫻井信一郎シェフが、キッチンステージに初登場です。東京・代々木八幡のベーカリー『365日』とコラボし、初冬のこの時期にピッタリの、体を温める煮込み料理とパンをご堪能いただく2週間です。

  • 11/30(水)~12/25(日)

    イタリアン

    原田慎次シェフ

    銀座
    <アロマフレスカ>
    原田慎次はらだ しんじシェフ

    年末の華やかなシーズンに相応しい、彩り豊かなメニューの4週間。目でも楽しめる豪華な前菜の後は、選べるパスタとデザートまでついた贅沢なコースです。原田シェフの香り高いお料理の数々を、ぜひキッチンステージで。

  • 12/26(月)~1/10(火)

    イタリアン

    柬理美宏シェフ

    伊勢丹新宿店
    <キッチンステージ>
    柬理美宏かんり よしひろ シェフ

    年末年始恒例、キッチンステージ料理長のスペシャルメニューです。過去に登場した数々の名シェフから認められた柬理シェフの技を、ぜひこの機会にご堪能ください。

場所:東京都新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿本店本館B1 明治通り側エレベーター前
10:30~20:00(L.O.19:00)
Tel: 03-3352-1111(伊勢丹新宿本店 大代表)
メニューについては、『Kitchen Stage by Kai House』公式ホームページ内
URL http://www.kai-group.com/fun/kitchen_stage/
※都合によりスケジュール・メニューの一部が変更になる場合がございます。

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