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季節の食にまつわることをお届けします 旬の食レポート

2017 Summer

身近な食のストーリー

焼酎ともち米、米麹の出会いが育んだ
日本独自の調味料「みりん」

キッチンに当たり前のように並ぶ定番調味料のみりん。
昔は高級なお酒だったと知っていましたか?
今なお飲んでおいしい、最高のみりん造りの現場を訪ねました。

  1. ①『白扇酒造』のみりん/(左から)福来純しぼりたて本みりん(500ml 季節限定商品)、
    福来純三年熟成本みりん(500ml ¥788)、福来純長期熟成本みりん(古々美醂 500ml
    ¥2,700)
  2. ② グラスに注ぐと熟成の度合いがはっきり分かる。 3年(写真中)できれいな琥珀色に。
    10年もの(写真右)はチョコレートのような色と香りに。
  3. ③ たっぷりの仕込米の中に浮き上がるみりんのモロミ。
  4. ④ モロミはゆっくり時間をかけて搾られる。

高級酒から調味料へ
変化した「みりん」の歴史。

 日本人にとって欠かせない調味料の「みりん」。その起源は今から500年ほど前、室町時代に琉球から伝わった焼酎に、米と米麹を合わせて仕込んだ日本独自の甘い酒が原型といいます。「密林酒」「蜜醂酎」などと呼ばれ、今よりサラリとした口当たりで、江戸時代には女性の間で流行しました。

 みりんが調味料とされたのは江戸時代後半。みりんとしょうゆ、出汁との組み合わせで作る和食文化の基礎が広く定着した時期です。その後は、料理に甘みや照り、ツヤを与える調味料として定着。戦中戦後の米不足や、課税問題など時代の影響を受けて、現在は「本みりん」「みりん風調味料」「発酵調味料」などさまざまな製法の、類似した調味料に分化しています。

 それでもなお江戸時代から変わらぬ製法で、本物のみりんを造る蔵があります。その伝統製法、造り手の心意気を知りたいと、岐阜県の飛騨川のほとり、川辺町の老舗『白扇酒造』へ向かいました。

老舗醸造所、5代目に聞く
先人から受け継ぐみりん造り
手造り麹と自家製焼酎、良きもち米で常に旨いみりんを
目指しています!

 江戸時代後期にはみりん屋を営んでいたという『白扇酒造』。その昔、みりん屋は日本酒の蔵元のそばに店を構え、そこの酒粕を貰い受け、酒粕に残ったアルコールで焼酎を造っていたそう。酒粕からアルコール分を抽出するカブト釜は、当時をしのぶオブジェとして蔵の入り口に飾ってあります。
「昔のみりん造りはそれくらい地味な作業でしたが、それでもおいしいものを造りたいという伝統が継承されたのはありがたいことでした」と語るのは5代目当主を受け継いだ、加藤祐基さん。先代と共に親子二代でこの蔵を守る、若旦那です。
 もち米と米麹、焼酎を原料にして造るみりん。そのうち焼酎と米麹は、この蔵での手造りです。「うちは明治期から清酒の醸造も手掛けており、同時にみりん用の焼酎もすべてここで製造します。麹も手造り。清酒や焼酎に必要な酵母菌も、みりん原料用の米焼酎や清酒の種類によって自社で培養するものもあります」。さらに原料のもち米も県内産を中心に吟味し自家精米して、春と秋の年2回の仕込みに万全の態勢で臨みます。

加藤祐基さん画像

加藤祐基かとうゆうきさん

『白扇酒造』5代目当主。東京農業大学で醸造学を学んだ後、家業を継いだ若旦那。自身は酒に興味がなかったが、古い杜氏たちと共にみりん造りや清酒造りをするうちに「味の伝承」と「自分にしかできない改革」に夢中になる。夢は蔵を広げ、敷地内に「お客さまとの交流スペースを設けること」。

 仕込み作業は、米に麹菌を振りかけ、空気を取り込みながら混ぜる麹造りから始まります。その麹ともち米、焼酎を混ぜたら、大きなタンクに貯蔵して約90日。途中で週に1回ほどの櫂(かい)入れ、寒ければタンクをマットで保温するなど手間暇かけた管理をするうちに、タンクの中にみりんのモロミが浮いてくるのです。

 タンクを覗いて驚くのは、みりん(=液体)の量がひどく少ないことでした。
「みりんは収量が非常に少ないんです。原料のうちの約50%は粕ですから。日本酒なら酒粕が20%といったところですよ」と加藤さんが笑いながら次に案内してくれたのは、モロミからみりんを搾る上槽室(じょうそうしつ)。タンクから運ばれたモロミを布袋に入れ、木製の槽(ふね)に重ねていきます。袋に力を入れて搾るのではなく、このまま重ねた重みで一晩かけて滴り落ちたみりんを集めるのです。搾り立てのみりんは白っぽく透明でフレッシュな香り。また定番の「福来純三年熟成本みりん」は、さらにタンクの中で3年熟成させた逸品で、トロっとした琥珀色、まろやかな甘みが特徴です。
「この旨さのために伝統製法を受け継いでいるといっても過言ではありません。常においしいものを提供したいんです」と、加藤さんは熱く語ってくれました。

左:袋に残ったみりん粕は、もち米も焼酎もふんだんに残っていてしっとりと風味が良い。名古屋名産の守口漬けに使われたり、「こぼれ梅」という名称で、店頭で販売されている。
右:搾り立てのみりん。『白扇酒造』ではさらに3年熟成させたみりんが定番だ。

『白扇酒造』の みりん造り

麹造り

生の米の上に麹菌を振りかけ、同時に空気を送りながら均等に混ぜ合わせていく。24時間の温度管理の下、2日かけて麹を造る。みりん造りの一番重要な工程だ。

仕込み

大きな機械の上から蒸し立ての熱いもち米が落ちてくる。ベルトの上で急速に冷やされ、焼酎と麹が混ぜ合わされる。その割合はすべて職人さんの按配(あんばい)で。

上漕

タンクの中で約90日寝かせたモロミを布袋に詰め、漕に横にして積み重ねていく。
袋からゆっくり滴り落ちたら、みりんの完成だ。

良きことを受け継ぎ、変革もまた。
自分にしかできない方法でみりんを広めたい!

「大学で醸造学や酵母遺伝子について学びましたが、他にもやりたいことがいっぱいあったんです」と言う加藤さん。

 そんな彼が蔵に戻って気付いたのは、蔵が伝統を守って素晴らしいみりんを造り出してはいるけれど、時代に合わせた変化が何もないことでした。「例えば、年々高齢化する杜氏さんたちの環境。重いものを運んだりね。労働環境、衛生管理も現代的ではありませんでした」。さっそく加藤さんが手掛けたのは、作業場の改造や殺菌作用のある洗浄水の導入など。その上で伝統製法の良さをしっかり残していきたいという考え方です。

「『白扇酒造』のみりんが本物の味であると、一部の専門家の方がマスコミなどで取り上げてくださったことで少しずつ知名度は上がってきましたが、やはり多くの一般の方に広めていくことが目標です。清酒部門では蔵出しイベントなどが盛況ですが、みりんも味わっていただく機会を作りたいですね。みりんは本来お酒なのですから、おいしい料理にもアレンジは無限にできるんです!」。
 来春には、地元の祭りの伝統儀式「酒買い」にも『白扇酒造』の当主として登場するかも。春の飛騨川を愛でながら、本物のみりんを味わう旅はいかがですか?

江戸時代から続く川辺町の伝統儀式

川辺町の氏神・太部古天神社の祭礼に行われる「酒買いの儀式」。これは漢の時代の高祖、別名沛王(はいおう)が獅子をお伴に地元の酒蔵(今は『白扇酒造』)に酒を買いに来るという行事。左甚五郎(ひだりじんごろう)作と伝わるお面をかぶり、三升徳利を下げて街を練り歩く沛王と、『白扇酒造』当主とのパントマイムのやり取りがユーモラスなこの儀式。江戸時代から続くものと伝えられています。一度は見てみたい祭りです。

おすすめみりんレシピ

奈良漬けの風味がみりんとマッチ

野菜スティック奈良漬けマヨディップ

[材料(4人分)]
きゅうり …………………………………………2本
セロリ  ………………………………………1/2本
アスパラガス  …………………………………8本
大根(輪切り) ………………………………5cm分
にんじん …………………………………………1本
プチトマト  ……………………………………適量
[奈良漬けマヨディップ]
マヨネーズ   ………………………………1カップ
味噌  ……………………………………小さじ1/2
「福来純三年熟成本みりん」 ……………小さじ2
奈良漬け(みじん切り)  ………………大さじ1

[作り方]
  1. プチトマト以外の野菜類は、食べやすい大きさのスティック状に切る。
  2. ボウルに[奈良漬けマヨディップ]の材料を入れて混ぜ合わせる。

フルーツを凍らせてもおいしい

ライムレモネード

[材料(10人分)]
レモン  …………………………………………5個
ライム  …………………………………………5個
グラニュー糖  …………………………………300g
ミネラルウォーター  ………………………2000ml
「福来純三年熟成本みりん」  ………………適量
(グラス1杯につき大さじ1程度が目安)

[作り方]
  1. レモンとライムを輪切りにし、グラニュー糖をまぶして1時間ほどおき、そのうち半量ほどを搾り(果汁が出てくる)、残りはそのまま、保存瓶などに入れる。
  2. ①にミネラルウォーターを注ぎ、冷蔵庫で3時間冷やす。
  3. グラスに氷を入れ、福来純三年熟成本みりんと②を注ぐ。

レシピ提供/『白扇酒蔵』ホームページの「白扇酒蔵・お料理レシピ」より

新しい麹室。米と麹菌を混ぜる作業の後、一晩寝かせる台に移し替えるのだが、2つの台の間にレールを敷いて、移動の重労働を大幅に軽減させた。

仕込みの現場のそばに新設した研究室。気付いたことや感じたことはすぐ記録できるよう、また打ち合わせも可能な空間を作った。

小さな杉玉がたくさん下がった、格式の中に愛らしさが漂う佇まい。
蔵の銘酒「花美蔵(はなみくら)」の樽が目印だ。

白扇酒造

〒509-0304
岐阜県加茂郡川辺町中川辺28番地
☎0120-873-976

ようこそ、伊勢丹新宿本店「Kitchen stage by KaiHouse」へ!

『KITCHEN STAGE by Kai House 』は、伊勢丹新宿店の地下1階に設けたイートイン・スペース。2~3週間ごとにさまざまなジャンルの人気料理人や料理研究家たちが考案したメニューを提供しています。カウンター席前のオープンキッチンでは、プロならではの道具使いや盛りつけが繰り広げられ、料理を学んでいる方にとってもプロの技を間近で見られる絶好の場として好評です。

また、「『KITCHEN STAGE』で食べたあの味を家庭でも作りたい」、お客さまにそう思っていただけるよう、調理の詳しいポイントに加え、どんな食材や道具を使用しているのかも、配付しているレシピなどでわかりやすくご案内しています。食材や季節感にもこだわった、プロが作る“本物の味”を用意してお待ちしておりますので、ぜひ一度お越しください。

『Kitchen Stage by Kai House』は、スタイリッシュなオープンキッチンを完備。セミナー時には、人気料理人や料理研究家の調理技術を目の前で見ながらお食事ができます。

< 2017年2月~3月に提供した料理>

2/15(水)~2/27(月)

『六雁』の秋山料理長が、石川県の魅力的な食材を使っておしゃれなメニューに仕立ててくださいました。「山のあわび」と絶賛される椎茸“のとてまり”は、石川県がブランド化を進めている希少なもの。菊芋のピューレをソースにして味わう“のとてまり”は、香りと食感が最大限に引き出された絶品の一皿に。

3/1(水)~3/14(火)

期間限定の『麺屋武蔵キッチンステージ店』がオープンしました。日本酒の獺祭(だっさい)を煮切った出汁で作る「獺祭酒煎りら~麺」や、ここでしか食べることのできない限定「伊勢丹醤油ら~麺」など、『麺屋武蔵』代表・矢都木氏の、渾身の一杯をお楽しみいただきました。

<6月~7月に登場予定のレストラン・シェフ>

  • 6/7(水)~6/27(火)

    和食

    笠原 将弘シェフ料理長

    恵比寿
    <賛否両論>
    笠原 将弘かさはら まさひろ
    料理長

    毎年恒例の笠原料理長の登場です。ピューレにしたふわふわの玉ねぎを敷いた和牛のすき煮など、定番和食が驚きの技とアイデアで新しい美味に大変身します。

  • 6/28(水)~7/11(火)

    和食

    奥田 透氏

    銀座
    <小十>
    店主 奥田 透おくだ とおる 氏

    約2年半ぶりの登場となる今回は、夏の食材をふんだんに使用した上品なお料理のコース。妥協を許さない奥田氏が作り上げるオリジナルのメニューをどうぞ。

  • 7/12(水)~7/25(火)

    中華

    松下 和昌シェフ

    神楽坂
    <ENGINE>
    松下 和昌まつした かずまさ シェフ

    “和の風情を感じさせる中華”が代名詞の『ENGINE』。意外な食材の組み合わせで驚きの料理を作り上げる松下ワールドを、ぜひキッチンステージで体感してください。

場所:東京都新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿本店本館B1 明治通り側エレベーター前
10:30~20:00(L.O.19:00)
Tel: 03-3352-1111(伊勢丹新宿本店 大代表)
メニューについては、『KITCHEN STAGE by Kai House』公式ホームページ内
URL http://www.kai-group.com/fun/kitchen_stage/
※都合によりスケジュール・メニューの一部が変更になる場合がございます。

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